信濃川ウォーターシャトル株式会社は、1998年3月20日に設立されました。 今年でちょうど満15周年となります。都市公共交通としての水上バスに可能性を見い出そうとする試みでしたが、当地では何よりマイカーの利用を優先する傾向がますます加速し、当初の目論見とは反対に観光遊覧船としての存在の方が優勢となってしまった感があります。勿論、観光目的のご利用も想定し、船のインテリアなどは、水上バスというよりレストランシップのような設えにしたわけですが、新潟市そのものが観光地でない以上(金沢市、長野市、仙台市等と比較すれば一目了然)、もともと旺盛な観光需要があるわけではありません。

もっとも、5隻の船を揃えて早朝から深夜まで日中20分間隔、通勤時間帯15分間隔で一日100便近くを運航する計画を有していましたが、2隻の建造にとどまっているのは、弊社の責任でもあります。現状の運航体制で収支均衡を果たしてからでないと、その先に進むにはあまりにもリスクが大きく、やむを得ず現在の運航体制を維持し、収支の改善を実現させなければならないと考えております。

講演や執筆を頼まれた際に、ご紹介するのがオーストラリアのブリスベン市の水上交通City Catです。1996年に150人乗り6隻でサービスを開始したCity Catは、その後次々と増備が進み、現在ではなんと19隻の船により早朝から深夜までフリークエントサービスが実現されています。その運航状況は、航路延長や運航時間帯などウォーターシャトルの当初計画と酷似しており、まさしくウォーターシャトルが目指していた水上交通が遠く離れたブリスベン市で実現しています。現在ではCity Catの年間利用者は300万人を超えています。都市における公共交通を重視する政策が実行され、船そのものはブリスベン市が所有、鉄道、バスなどの他の交通機関と共に地域交通公社(TRANSLink)が一元的に運営しており、地域住民の足として確実に交通インフラを形成しています。

我が国では、地方の公共交通は絶滅危惧種状態です。JR、私鉄、地下鉄、路面電車、バスはそれぞれ個別の事業者によって運営され、共通乗車(船)券はおろか同じバス会社の路線を乗り継ぐ場合でも運賃が別途計算され、割高に設定されています。利用しにくいから客離れが進み、それが運行本数の削減を招き、また利用者が減るという悪循環の連鎖に陥って何十年もの歳月が経過しています。何とかこのような悪循環を断ち切って、移動の容易な交通の確保が実現される都市公共交通政策が実行されることを願ってやみません。

3月16日(土)、17日(日)と朱鷺メッセを会場に「新潟酒の陣」が開催されます。ウォーターシャトルも3月23日からの定期航路再開を前に、シャトル便の特別運航を行います。渋滞無縁の会場への足として、また混雑した会場内から退避して、ゆったりとした時間を過ごすことのできるウォーターシャトルをご利用下さい。朱鷺メッセから新潟ふるさと村を往復すると1時間45分です。料金も1日乗り放題のフリー乗船券が通常1800円のところ1500円とお得になっています。また、船内では酒の陣に出展していないとっておきの新潟の地酒もご用意して、皆さまのご利用をお待ちしております。(酒の陣でお買い求めのお酒や食べ物の持ち込みも自由です。)

最後に、3月20日(祝)には、会社設立15周年を記念して朱鷺メッセ発着の500円ワンコインクルーズを運航します。25分のミニクルーズですが、上流方面と港方面を交互に運航します。雪解けの水がきれいな早春の信濃川クルーズをお楽しみください。